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東京地方裁判所 昭和41年(特わ)733号・昭41年(特わ)657号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕弁護人の主張に対する判断

被告人両名の弁護人は

(一)、本件公訴事実のうち、昭和四一年一二月一三日付起訴状末尾添付の貸付関係一覧表中、番号一二七、一二八、一二九、一三〇の四件、すなわち市川和典に対し昭和四一年二月六日に一〇万円宛二口と一三万円一口、同年二月一五日に三三万円一口を貸付けた分(判示一覧表の一三二ないし一三五に該当)については、被告人両名はいずれも利息は一〇〇円につき一日三〇銭の割合で受領したに止まり、その他に利息とみなされるべき金銭を受領し、またはその支払について契約をした事実はないから、この分については出資の受入、預り金および金利等の取締等に関する法律第五条第一項には抵触しない。

(二)、本件公訴事実のうち、昭和四一年一一月一一日付起訴状末尾添付の貸付一覧表中番号五のもの、すなわち鳥海仙吉に対し昭和四一年六月二〇日に三〇万円を貸付けた分(判示一覧表の五に該当)、昭和四一年一二月一三日付起訴状末尾添付の貸付関係一覧表中番号三五、三八、四一、四二のもの、すなわち宮内泰男に対し、昭和四一年七月三日一〇万円、同月四日六万円、同年八月一五日一〇万円、同月一七日八万円を貸付けた分(右同四〇、四三、四六、四七に該当)、同じく番号一〇九ないし一一三のもの、すなわち佐伯幸三に対し昭和四一年七月七日、同月九日、各月一五日に各二〇万円、同月一三日に三〇万円、同月一五日に四〇万円を貸付けた分(右同一一四ないし一一八に該当)並びに同じく番号一二七、一二八、一二九、一三一、一三四のもの、すなわち市川和典に対し昭和四一年二月六日一〇万円二口、一三万円一口、同月一二日、一四日に各一〇万円を貸付けた分(右同一三二、一三三、一三四、一三六、一三九に該当)については、いずれも一〇〇円につき一日三〇銭を超える割合の利息の支払を契約した事実はあるが、これらの元金はいずれも焦げつきとなつて現在なお弁済を受けていないものである、そして仮に利息を天引して貸付けたとしても、その貸付元金が弁済されない場合には、その分に対する利息は結局支払われなかつたものと解すべきであるから、これらについては利息の支払を契約したことには該当するとしても利息を受領したことには該らないものというべきであると主張する。しかしながら弁護人のこれらの主張は刑事訴訟法第三三五条第二項の主張に該当しないのみならず、当裁判所はすでに判示のとおり認定してこれを容れていないことが明らかであるが、なお参考のため附加して説明する。

(一)、弁護人の主張(一)の点について。

被告人両名の第四回公判期日における供述の内容は弁護人の主張する事実に副うかの如くであるが、この供述は被告人両名の当公判廷における従来の供述および捜査官に対する供述調書の記載、就中被告人細田健一の司法警察員に対する昭和四一年一〇月二八日付供述調書第四項の11の記載部分と対比してにわかに信用し難く、かえつて市川和典の検察官に対する供述調書によると、被告人らが市川和典に対して貸付けた金員のうち一部の利息を被告人両名が第四回公判期日において供述するような経緯により日歩三〇銭に止めたのは、昭和四一年八月一日以降の一〇〇万円分についてであつて、それ以前の貸付分はすべて他の例に同じく利率は一〇日一割の割合であつたことが認められる。そして弁護人の指摘する貸付分はすべて昭和四一年七月三一日以前であることが明白である。なお弁護人は、市川和典は証人として召喚を受けながら理由もなく当公判廷に出頭しないこと等の事実を挙げて同人の検察官に対する供述調書の内容が信用できないと主張するが、弁護人指摘の事実を十分考慮に容れて検討してもこれを以て直ちに信用できないものとは認められない。したがつて弁護人のこの点に関する主張は採用し得ない。

(二)、弁護人の主張(二)の点について。

この点については、弁護人の指摘する貸付分はその指摘のように現在まで元金が弁済されず焦付きのままになつていることは証拠によつて明らかである。しかしながらその元金に対する利息の受授に関しては、鳥海仙吉に対する分については、

(イ)、鳥海仙吉の司法警察員に対する供述調書(四一・九・二六)および被告人細田健一の司法警察員に対する供述調書(四一・一〇・二二)を総合すると、右鳥海は元金については約定の期日に弁済できなかつたので、利息の三万円だけを支払い元金は書替の方法によつて弁済期日を延期した事実が、

(ロ)、宮内泰男に対する分については、証人宮内泰男の当公判廷における供述および同人の司法警察員に対する供述調書総合すると、従来からの書替分はともかく、新規に貸付けた分についてはその貸付けの際一〇日につき一割の割合による利息を天引し、その残額を交付していること、そして弁護人の指摘する四件はすべて新規貸付の分であることから、当然これらについては貸付の際利息を天引している事実が、

(ハ)、佐伯幸三に対する分については、証人佐伯幸三の当公判廷における供述および同人の司法警察員に対する供述調書を総合すると、昭和四一年一二月一三日付起訴状末尾添付の貸付関係一覧表中番号一〇九、一一〇、一一一、一一三の四件分合計一一〇万円に対する利息は、同じく番号一一二の二〇万円借用の際、その二〇万円の借用分に対する利息とを合せて結局一二万円を天引され、残額八万円を受領しているにすぎず、したがつて当該貸付日である昭和四一年七月一五日に利息の弁済に充当されている事実が、

(ニ)、市川和典に対する分については、市川和典の司法警察員並びに検察官に対する供述調書を総合すると、新規貸付の分は貸付の際所定の利息を天引し、書替の場合にはその都度利息を支払つている事実が

それぞれ認められる。すなわち元金が現在なお弁済されていないとしても、元金に対する利息については、貸付の際天引するとか書替の際に支払う等して被告人らにおいては現実にこれを収受しているのである。

弁護人は、貸付に際し利息を天引したときでも、その元金が弁済されなかつたときは結局これに対する利息も支払われなかつたものと解すべきであつて、利息の支払につき契約をしたことに該当するとしても、利息を受領したことには該らないという。しかしながら仮に元金の弁済がなされなかつたとしても、その利息の受授を元金のそれと別個に評価することは法律的にも経済的機能の面からも可能であつて、本件のごとく利息を天引するとか後日利息として金員を収受している以上、法律的に有効な利息の支払があつたものと見ることができ、また現実にその目的に応じた経済的利益を享受していのであるから、弁護人のいうように単に契約をしたにすぎないと解するのは相当でなく、出資の受入、預金および金利等の取締等に関する法律第五条第一項にいう利息を受領した場合に該当するというべきである。したがつて弁護人のこの点に関する主張も理由がない。(近藤暁)

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